三枝成彰オペラ「Jr.バタフライ」イタリア語歌詞、イタリア人キャストによる日本初上演
作曲:
三枝成彰
指揮:
三ツ橋敬子
Jr.バタフライ:
ジャンルーカ・パゾリーニ
ナオミ:
ロッサーナ・カルディア
スズキ:
桜井万祐子
野田少佐:
エウゲネ・ヴィラヌエーヴァ
詩人:
ヴェイオ・トルチリアーニ
尼僧:
ヴァレンティーナ・ボイ
マッカラム、レバイン :
アントニオ・ヴィンチェンツォ・セッラ
バートン、記者 :
ペドロ・カリッロ

オペラ「Jr.バタフライ」は、ジャコモ・プッチーニの名作「蝶々夫人」に触発されて生まれた三枝成彰のオリジナル作品です。
“蝶々の息子”のその後の人生を通して、“なぜ戦争は起きてしまうのか?”が全編を貫く大きなテーマとなっております。
同作品は、2004年に初演、2006年にはイタリアのイタリアのプッチーニ音楽祭財団の招待を受け、プッチーニ音楽祭で上演。そして2014年に、再び プッチーニ音楽祭の招待を受け、イタリア語歌詞、イタリア人キャストによる上演が実現しました。
その日本凱旋公演を、2016年1月23日富山、1月27日東京にて開催いたします(日本語字幕付き)。イタリアの若手精鋭歌手が出演し、イタリア在住の指揮者、三ツ橋敬子と共演します。
戦争終結から70年を迎えたいま、多くの皆様にぜひ、この作品をご高覧いただきたくご案内いたします。

第一幕 1941年2~3月
蝶々夫人が生んだ男の子はピンカートン家に引き取られて、父親と同じ名前を与えられ、生みの母の記憶を一切持たないまま成人した。彼と母を結びつける絆は「ジュニア・バタフライ(蝶々の息子)」というニックネームだけ。今は、アメリカ戦争情報局の職務で日本の神戸に赴任している。その生まれから、本国でも差別を受けてきた彼は、アメリカのために働きながらも母の母国、日本への思慕を強くしていた。

折りしも日本は中国大陸への侵攻を進めており、それに抗う米英との対立は激化。ジュニア・バタフライ(J.B)の心は日本とアメリカの狭間で大きく揺れていた。
日本を非難し、「この国はアメリカと戦争をするつもりか? 」と問いかける上司マッカラムにJ.Bは「日本を追い込んでいるのはアメリカだ」と反論する。そして「この顔を見ろ。ジャップでもなくヤンキーでもない。あいだに生まれたこうもりだ。私はこうもりの自由を生きる」と。

第二幕 1941年9月~12月
J.Bは恋人ナオミを強く愛していたが、未だ恋と職務の板ばさみになり、結婚を申し込めずにいた。ナオミの兄、野田少佐は二人の恋の行方を案じずにはいられない。
野田少佐に「妹との結婚は考え直してほしい。互いに祖国を裏切るわけにはいくまいから」と懇願されたJ.Bは、心のうちを訴える。「私は中立を守る。母が生まれ、亡くなったこの国で。これがあいだに生まれたこうもりの務めだ。どんな運命に弄ばれようと、私は最後の恋に生きる」
その言葉を聞いた野田少佐は、「自分は二人の結婚を認めないが、J.Bの立場は理解する。いつか、二人を祝福する日が来るかもしれないが、そのときは自分はこの世にいないだろう」と告げ、J.Bと盃を酌み交して出征する。

J.Bとナオミの結婚は誰からも祝福されることはなかったが、二人は束の間の幸せを感じていた。
一方、日本とアメリカ、互いの祖国の対立は激しさを増していた。「離れ離れになっても心は一つ」と誓う二人のもとに、戦争勃発の報がもたらされる。やってきたのはアメリカ領事館のバートン。「戦争だ。パールハーバーが攻撃された。領事館は閉鎖だ。我々は捕虜になる。」

第三幕 1945年7~8月
 収容所に入れられたJ.Bのもとに、ナオミは息子を伴って訪ねてくる。戦争が終わりを告げた後の未来を語り合う二人。
 「ここを出たら、何処へ行こう、何をしようか ?」と問うJ.Bにナオミは優しく夢を語る。
 「あなたの恨みや憎しみさえも愛したいから、あなたが辿った旅の軌跡をなぞりたい。あなたが生まれた長崎へ行き、一緒に遠い過去の記憶を集めたい」
 長崎で再開することを約束して、ナオミはJ.Bのもとを去るのだった。

 原爆投下から二ヶ月が経過した廃墟の長崎。戦争は終わり、J.Bは釈放され、ナオミと息子を探して長崎にやってきた。すっかりやつれ、足をひきずりながら丘の上に立ったJ.Bは「俺はここで生まれたのだ」とつぶやく。父と母が愛し合った街は見る影もない。しかし、母とともに毎日眺めていたはずの海は、何事もなかったように揺れていた。J.Bは涙を拭いながら、「母よ、息子はあなたの恋の残酷な結末を見ている」と歌う。
 教会にたどり着いたJ.Bは扉を開け、尼僧に尋ねる。「私の妻ナオミは何処にいるかご存知ありませんか ? ベンジャミン・ピンカートン・ジュニア、ナオミの夫です」と名乗るJ.Bに尼僧は礼拝堂からドラゴンの蒔絵のある短刀を持ってきて渡す。「あなたのお母様の形見です」そして尼僧は、ナオミが生きていることをJ.Bに告げる。

 長崎で被爆し「もうこの世の者ではない」というナオミに、J.Bは「戦争は終わった。ぼくたちの未来は始まる」との呼びかける。J.Bの「離れ離れにはっても二人の心は一つだ」という問いかけに、ナオミは悲しそうに「今でも私を愛している ? 私が蘇ったら、もう一度結婚してくれる ?」と囁きかける。J.Bはナオミに永遠の愛を誓う。
 「死者は夢の中の人と同じ。いつでも会いに来てください。あなたはただのあなた。そして、私はただの私。私たちの恋は浜辺に寄せる波や、森を吹き抜ける風になって、この世の響きと怒りをそっと撫でるのです」
 その遺言とともにナオミは息絶える。J.Bが駆け寄り、彼女を抱き上げる。
 合唱による「永遠に続く災厄などない。死者は悲しみの向こうで待っている。生き残った者が再び希望と勇気を、微笑と力を取り戻すのを」で幕を閉じる。

● 2004年4月 東京にて世界初演
2004年4月6日、8日、10日
東京文化会館 
台本:島田雅彦 
作曲:三枝成彰 
指揮:大友直人 
演出:ダニエレ・アバド
Jr.バタフライ:佐野成宏
ナオミ:佐藤しのぶ
● 2005年4月 神戸にて上演
阪神・淡路大震災10周年記念事業の一環として
2005年3月31日、4月2日
神戸国際会館 こくさいホール 
● 2006年8月 イタリアの第52回プッチーニ音楽祭にて上演(字幕付き日本語上演)
2006年8月3日、9日
トッレ・デル・ラーゴ野外大劇場
【イタリア・トスカーナ州】
台本:島田雅彦 
作曲:三枝成彰 
指揮:大友直人 
演出:島田雅彦
Jr.バタフライ:佐野成宏
ナオミ:佐藤しのぶ

● 「2008年プッチーニ国際賞 Puccini International Award」を受賞
プッチーニ生誕150周年にあたる2008年、イタリアのトッレ・デル・ラーゴのプッチーニ・フェスティバル財団より、作曲活動の功績、オペラ「Jr.バタフライ」を通じての、プッチーニ作品の普及活動が認められ、三枝成彰が「2008年プッチーニ国際賞 Puccini International Award」を受賞。
●2014年8月 イタリアの第60回プッチーニ音楽祭にてイタリア語歌詞による初上演
ナオミ役の佐藤しのぶ以外のキャストは、現地のオーディションにより選定。日本とイタリアの共同制作となった。
●2016年1月 プッチーニ音楽祭凱旋公演